洞峰公園 を真の 「自然公園」 に

 洞峰公園を真の「自然公園」として維持・管理することで、自然 環境を守り、県と市の負担を軽減して、市民よし、つくば市よし、茨城県もよしの、三方よしの解決策が可能です。


1.「庭園公園」ではなく「自然公園」で問題を解決

洞峰公園問題の対案として考えられるのは、「自然公園」としての管理と利用です。現在も 「自然公園」ではないかと言う意見もあると思いますが、洞峰公園の現状は、偕楽園や兼六園の様な大規模な「庭園公園」です。「庭園公園」の維持管理には膨大な費用がかかります。多くの観光客が集まる公園でないとその維持は難しいのです。県が問題視しているのは、洞峰公園の年間1億5千万円の維持・管理費で、その半分の7,500万円が公園緑地の管理費です。この多額な緑地の管理費に問題解決のカギがあります 。

 実は、市民のための「自然公園」ならば、維持管理のための費用は庭園公園に比べて著しく安くて済むのです。 その根拠を次に示します 。

1)「自然公園」の場合の管理は、庭園としての管理ではなく、里山や草地として管理します。

2)芝生の雑草取りは行わず、芝生ではなく草地として管理 すれば、年間数回の草刈りを行えばよく、刈った草は敷地外に持ち出さずに 公園内で土に還せば費用もかかりません 。

3)一部に全く 手を加えない灌木帯を設け、野鳥のサンクチュアリ(聖域)帯を造るのもよいでしょう。ロンドンのハイドパークに実例があり、大都会の真ん中であるにもかかわらず様々な種類の小鳥が集まって来て、鳥の声が喧しいくらいで す 。

4)樹木の管理は、高いところの枝の剪定は一切行わず、新たな植樹と間伐のみとします。

5)間伐木は森の中で、数年をかけて土に還すことが出来ます。この過程で、様々な種類のキノコや、カブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ、綺麗な玉虫 などが大量に発生しますから、子供たちは大喜びです。これまでは、剪定した枝や刈り取った草を外部に搬出し、多額の費用をかけて昆虫の卵や蝶の蛹を焼き殺していたのです 。

6)間伐の選木や、草刈りの時期や回数をコントロールすることで、多様な 種類の樹木と野草、小鳥や昆虫の宝庫になり、バードウォッチングや虫の鳴き声、蝶やトンボの飛翔を楽しめ る「自然公園」になります 。

 この様に、鳥や虫たちや自然の樹木や野草と共生する「自然公園」の管理は、庭園型公園の管理の10分の1くらいで済 むので す。一番費用 がかかるのは、芝生 の雑草取りと樹木の剪定、刈り取った雑草や間伐した木材を搬出しての焼却処理だからです。


2.「自然公園」型の緑地管理の実例

 「自然公園」の管理の実例として、小規模ですがつくば市春風台に、( 景観緑地と呼ばれている)宅地に沿って奥行12m長さ100メートルの緑地帯が、全部で16面あります。自然の草地にはベニシジミやルリシジミなどのゼフィルスと呼ばれる小型の蝶が舞い、秋にはスズムシがたくさん鳴いてい ます 。管理をサボった家庭菜園の灌木の下でカルガモが雛を育てて 、しっかり者の母鳥とかわいい雛たちが、近くの用水池まで行列で歩いて行ったこともあります。庭の木にかけた巣箱ではシジュウカラの夫婦が11羽もの雛を全部無事に巣立たせました。住宅地の真ん中であるにも拘わらず、それだけエサが豊富で自然が濃いのです 。

 この緑地帯の管理費は、1平方メートル当たり年間50円です。洞峰公園の総面積は20ヘクタールですから、同じ管理方法なら年間1000万円で済む計算になります。(洞峰公園の場合は、 20ヘクタールのうち池と建物の面積が半分くらいあるので、緑地の面積は半分の10ヘクタール位です。これで年間の管理費が7,500万円ということは、1平方五メートル当たり年間750円もかけている計算になります。「自然公園」の管理費の10倍以上です。)


3.洞峰公園の生態系は隣接する研究施設の森と一体

 洞峰公園に隣接して、産総研や気象研の拡張用地の緑地がありますが、これらの緑地は下草刈りをする程度で概ね「自然公園」と同じ様な管理がされています。

 研究施設の拡張に使用するまでは、(無償で借り受けて市民のための「自然公園」として暫定的に活用することは可能だと思います。つくば市の中心部に大規模な本物の「自然公園」が出来れば、それはつくば市の枠を超えて貴重な存在となって、広く首都圏から上質な来客を望める 可能性が あります。


4.茨城県の当初の方針

 ここで、あらためて県の当初の方針を整理してみましょう 。

1)県が出している費用は、年間1億5千万円
  半分が建物の管理費で、残り半分が緑地の管理費で ある 。
2)業務委託で、年間 6,000 万円の経費が節減できる。
3)グランピング施設に使用するのは、現在使われていない野球場の部分だけである。
4)公園と施設は今のまま保存される。
5)引き続き、県は年間 9,000 万円を支出する。
6)つくば市の費用負担はゼロ円である。

 この提案に何故つくば市が反対するのか分からない、
 と言うのが茨城県の言い分で した 。


5.つくば市と茨城県の対立

 これに対して、五十嵐市長はグランピング施設による公園環境の悪化を理由に県の方針に反対し、グランピング施設を阻止するために都市計画の変更を拒否する姿勢まで示したことから、県と市の議論がこじれてしま いました 。その後、大井川知事が洞峰公園 全体 をつくば市に無償で譲渡してもよいとする案を示したことから、 五十嵐市長は 1 月 31 日の記者会見で、市が無償で県から譲渡してもらうのがベストであるとの見解を示し まし た。


6.パークPFI (グランピング施設)受け入れか、市への無償譲渡か、二 者択一がもたらす市民間の 不毛な対立

 先日 行われた説明会で 、次の様な提案をしました。

 つくば市が緑地の管理を引き受けて「自然公園」として管理をすれば、県は毎年7,500万円の 緑地管理の経費が節減できるのだから、年間6,000万円の収益を見込んだパークPFI の事業を無理にやらなくても、これまで通りの管理ができるのではないか、と茨城県に提案しました。また、つくば市の負担も年間で1,000 万円から 2,000 万円 の負担 で済むはずだ から、無償譲渡で年間1億5千万円も負担するよりも、この方がよいのではないか 、とつくば 市にも提案をしました。県は当初予定した経費の削減が十分に達成できて、洞峰公園の自然環境はこれまでより良くなり、無償譲渡を受けた場合よりもつくば市の負担は著しく低減できるから、県よし、つくば市よし、市民よしの、三方よしの案 となるはずです。

 ところが、県の担当者は「PFI (グランピング施設を受け入れか、つくば市が一括譲渡を受けいれるかの二者択一しかない」と言うのです。五十嵐市長も、県から無償譲渡がベストであると言って、「 PFI (グランピング施設)受け入れか、市が無償 譲渡を受け入れるかの二者択一 」を市民に迫る様です 。

 県もつくば市も「無償譲渡」と言っていますが、取得の費用が無償であっても 、今のままでは県と同様に年間1億5千万円の維持のための 費用負担が発生します。建物は建築後40年経っていますから、移管時に県が修繕してくれたとしても、将来の維持費用はもっと高くなることが予想されます。 公園の施設を守ることは重要ですが、つくば市民の費用負担を考えると、老朽化したハコモノをつくば市が引き継ぐことが、本当に市民のために良い方法なのか疑問 です 。

 毎年の1億5千万円の出費は、20年間で30億円、40年間で60億円の出費です。つくば市の場合は借入金を20年で償還していますから、毎年1億5千万円の返済金があれば、現在の時点で30億円から20年間の金利を引いた額の資金を調達できます。これだけのお金があれば市民のためにいろいろなことが出来るから、毎年1億5千万円の出費は市民生活に大きく影響します。いくら洞峰公園の自然環境を守るためとはいえ、つくば市民の同意を簡単に得られる金額ではありません。「使われなくなった野球場のグランピング施設を止めるために、老朽化したハコモノを引き受けて、年間1億5千万円もの負担しなければならないのか?」 、「それだけのお金があれば、もっと子育て支援や福祉に廻せ 」等々の議論になると、市民同士が対立して(させられて)、結局は不幸な結末になりかねません。

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